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レゾナンスCafeVol.043「『人新世の「資本論」』を読む〜話題のベストセラーについて語り合う」開催報告

レゾナンスCafeVol.043「『人新世の「資本論」』を読む〜話題のベストセラーについて語り合う」開催報告

レゾナンスCafeVol.043「『人新世の「資本論」』を読む〜話題のベストセラーについて語り合う」開催報告

2020年12月9日にレゾナンスCafeVol.043「『人新世の「資本論」』を読む〜話題のベストセラーについて語り合う」を開催しました。

つなぶちようじさんに『人新世の「資本論」』について簡単にまとめてもらい、それを土台に参加者のみなさんと意見交換をしました。

『人新世の「資本論」』をひと言でまとめると、脱成長コミュニズムについての提案書だそうです。それを説明するのにつなぶちさんは「人新世とはなにか」「なぜ資本主義は終焉を迎えるのか」「共産主義はなぜ嫌われたのか」と説明し、それを受けて「脱成長コミュニズム」について説明しました。

『人新世の「資本論」』によれば、未来の選択肢は四つしかないそうです。人新世の深刻化によって、それ以外の選択肢は採れなくなったと。その選択肢は『人新世の「資本論」』の図18にあるとおりです。
④の脱成長コミュニズムについて、その柱となる考え方を説明してもらいました。

1.使用価値経済への転換
資本主義では価値を上げることが仕事になる。
たとえば、ブランド商品。
付加価値を付けて値段を上げる。
付加価値はたいていの場合、その価値がないと生きていけないというものではない。
一方で使用価値というのは「基本的にこれがないと生きていけない」というモノの価値のことをいう。
たとえば、水、電気、土地、食料、最低限の衣服など。
使用価値経済では使用価値の高いものを計画的に生産する体制を作る。なので、無駄なモノはあまり作られなくなる。

2.労働時間の短縮
もし使用価値経済になると価値を上げる仕事がなくなるので、人々の欲望を刺激する、広告、マーケティング、パッケージングなどが不要になり、投資銀行もコンサルティングも必要ではなくなる。その結果、労働時間を短縮して生活の質を上げることに集中できるという。

3.画一的な分業の廃止
オートメーション化やマニュアル化は仕事の効率を上げるが、労働の喜びは剥奪されるという。各個人の自律性を尊重して、個性的な仕事を創作できるように、画一的な分業は廃止する。

4.生産過程の民主化
各個人が自律性を尊重して、個性的な仕事を創作できるように、労働者たちが生産における意思決定権を握る。そのためには話し合いが必要で、結果として意思決定に時間がかかるようになる。
この意図的な意思決定のための減速が大切。
ソ連は米ソの開発競争に煽られ官僚主導の独裁国となってしまった。

5.エッセンシャルワークの重視
使用価値経済に転換するため、エッセンシャルワークを重視する。機械化が困難で人間が労働しなければならない部分を効率化すると、質が低下する。そこに手間をかけることで使用価値経済を鮮明にする。

脱成長コミュニズムのためには国家の力を前提としながらも、〈コモン〉(公共)の領域を広げていく。このプロジェクトの基礎は信頼と相互扶助となる。

実際の世界は政治・経済の腐敗が明確となり、気候変動が起き、新型コロナが蔓延し、世界人口が80億にならんとし、来年のダボス会議では「グレート・リセット」が謳われています。この混乱を直視しなければなりません。

以上が今回のお話しの要旨でした。

今回、つなぶちさんがした話には、人新世の深刻さが欠けていたように思います。クリス・ボヌイユとジャン=バティスト・フレソズの共著による『人新世とは何か』に書かれていることですが、過去250年間の歴史をふりかえると人新世の歴史とは、耐久不可能なものを標準化してしまう脱抑制の歴史であることがわかります。それは簡単に言えば「なんとかなる」の連続だったと言うことです。それが250年間続き、いまも「なんとかなる」と多くの人は思っているのです。

政治は民衆に安心感を与えるために事実を隠蔽します。それは福島の原発事故で嫌というほど思い知らされました。もしこのままだと、これからも続くでしょう。

毎日新聞 2012年2月27日に掲載されたユージン・スミスの夫人、アイリーン・美緒子・スミスさんのインタビュー記事に「水俣と福島に共通する10の手口」というものが掲載されています。

■水俣と福島に共通する10の手口■
1、誰も責任を取らない/縦割り組織を利用する
2、被害者や世論を混乱させ、「賛否両論」に持ち込む
3、被害者同士を対立させる
4、データを取らない/証拠を残さない
5、ひたすら時間稼ぎをする
6、被害を過小評価するような調査をする
7、被害者を疲弊させ、あきらめさせる
8、認定制度を作り、被害者数を絞り込む
9、海外に情報を発信しない
10、御用学者を呼び、国際会議を開く

人新世の深刻さはこのようなところに現れているのです。共産主義社会がいいかどうかはこれから丁寧な論議が必要でしょう。しかも中国の共産主義と、マルクスが理想として掲げた共産主義では大分違うもののようです。いま資本論が売れているそうですが、丁寧な議論には大切なことだと思います。

今回のクララのお菓子。キッシュとペドノンヌ。ペドノンヌは「尼の屁」という意味だそうです。

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