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レゾナンスCafe Vol.010 『宇宙と人間のレゾナンス』開催報告

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レゾナンスCafe Vol.010 『宇宙と人間のレゾナンス』開催報告

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Think the Earthの理事でありクリエーティブディレクターの上田壮一さんにお話しいただきました。上田さんはかつて電通に勤務し、企画担当としてNTT DATAが提供した「宇宙からの贈りもの 〜ボイジャー航海者たち」という番組制作に携わります。お話いただいた概要を以下に記します。

大学生の頃にメディアの仕事に興味を持ち、広告代理店に行くことになりました。電通は90年に入って96年に退職しました。
その後、龍村仁監督の映画「地球交響曲(ガイアシンフォニー)第三番」の助監督をしました。
いまはSOCIALとCREATIVEをつなぐ仕事、つまりソーシャル・コミュニケーション、ソーシャル・デザインをテーマに仕事をしています。
コミュニケーションやデザインの力で人の心を動かし、社会・環境課題の解決支援や理解促進、行動促進をおこないます。
今日は電通時代に作ったテレビ番組「宇宙からの贈りもの 〜ボイジャー航海者たち」にまつわるエピソードについて、話をしたいと思います。

1977年にボイジャー1号2号は飛び立ちました。
積まれていたチップは8bitのコンピューター。メモリーは69KB。
メモリーが少ないので木星までの命令までしかできません。
木星のミッションが終わると土星までの命令を通信で送りました。
手間をかけなければならなかったのです。
研究者たちがボイジャーに愛着を感じるひとつのポイントとなりました。
ボイジャーの模型がNASAのJPL(ジェット推進研究所)にあります。
宇宙を飛んでいるボイジャーに命令を与えるとき、その模型を見ながら考えるのが重要です。ここの器械をこう動かすとこれがこうなるんじゃないかというようなことを皆で打ち合わせして、ボイジャーに命令を送ったのです。
宇宙を飛んでいるボイジャーの模型が目の前にあるものだから、プロジェクトに参加していたメンバーは遠くのボイジャーに対して愛情を抱くようになりました。
ボイジャーはいま200億キロほど離れたところにいます。秒速17kmくらいで飛んでいます。いまだに信号は送られてきています。微弱な電波ですけど。
2025年まで電池は持つと言われています。
センサーはほとんど動いていません。
ボイジャーはスタートレックの映画の題材にもなったほど愛されました。
ボイジャーは木星の写真を送ってきました。
地球からでも縞程度は見えていたけど、こんなに鮮やかで毒々しい表面だとは思われませんでした。

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その後、木星にはガリレオ、土星にはカッシーニも飛んでいきました。
ガリレオはCPUのパワーも大きくて、メモリーも大きかったので、全行程を最初からプログラミングできました。でもおかげで故障したら何もできなくなるという危険性がありました。だからボイジャーのように通信してメンテナンスするやり方の方が良かったのではないかという人もいます。
1988年にアメリカ・ソ連を中心に世界中の宇宙飛行士たちの言葉を集めた地球の写真集「地球:母なる星」が発売されました。東西冷戦のさなかで、ベルリンの壁がまだあった頃です。
そこにはこんな言葉が紹介されていました。

「宇宙から眺めた地球は、たとえようもなく美しかった。
 国境の傷跡などは、どこにも見えなかった」

「最初の1日か2日は、
 みんなが自分の国を指さしていた。
 3日目、4日目は、
 それぞれ自分の大陸を指さした。
 5日目には、私たちの念頭には
 たったひとつの地球しかなかった」

「なぜ私たちがここにいるのか、今わかった。
 それは月をくわしく見るためではない。
 振り返って、
 私たちの住みかである地球を見るためなのだ」

軍人や科学者が詩人のような言葉をプレゼントしてくれました。
学生時代にはこれにとても感動しました。エンヤが流行っていて、それを聞きながらこの写真集をめくっていると自然に涙がこぼれてきました。
それまでは宇宙と関わる仕事に就きたいという想いがあったのですが、この写真集との出会いをきっかけに宇宙から振り返って見た地球の行く末に関心を持つようになります。こういうことが伝えられる職業に就きたいと思いました。
「地球:母なる星」の巻頭言はラッセル・シュワイカートとアリョーグ・マカロフ、アメリカとソ連の二人の宇宙飛行士によるものです。
龍村監督から「地球交響曲第一番」の出演者であるラッセル・シュワイカート編の撮影現場に誘っていただき、二人の対談イベントに立ち会わせてもらうこともできました。
この頃には10冊くらい「地球:母なる星」を買い込んで、知り合いに配っていました。
以前、毛利衛さんに番組でインタビューしたことがあり「三丁目の角を右に曲がるとね」みたいな感覚で「成層圏を抜けるとね」と仰っていて、日常の延長線上のように宇宙での経験を語る、その感じにぞくっとしました。その後、ある宇宙飛行士とお酒を飲む機会がありました。宇宙飛行士と居酒屋で一緒に時間を過ごしているなんて、まるでマンガか映画の場面のようで、すごい時代を生きているなと思いました。
1990年2月15日(日本時間)、ボイジャー1号が地球に向かって振り返りました。
太陽系のファミリーポートレイト(家族写真)を撮るためです。
私がJPLを訪れた1991年には、この写真が壁一面に貼ってありました。

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64億キロ離れたところから撮ったものです。
本来であれば太陽の方向を向くのは危険でしたが、あえて撮りました。
ボイジャーに愛着があったので、ボイジャーに故郷を一目見せたいという思いも生まれたようです。
とてもロマンチックな話です。
しかし、NASAのマネジメントは大反対しました。
国の予算、国民の税金を使って、科学的には何の意味もない写真を撮るわけにはいかないと。
それでも、エベレストに登った人が旗を立てるようなプロジェクトなんだと説得したようです。アメリカの宇宙船がフロンティアを切り開いた、その印を残すプロジェクトなんだと。
地球の写真は1ピクセル以下。ペール・ブルー・ドットと名づけられました。
カール・セーガンが「コスモス」という映画でその話をしています。YouTubeで見られます。

電通に入る前、ホーキング博士の出ているNTTDATAのCMを見て、こういう広告を作りたいと思っていました。

商品の広告やキャンペーンのCMよりも、あのCMのような志の高さとか、崇高な雰囲気のあるCMを作りたかった。だから僕はクリエーティブに入って、NTTDATAの広告のような仕事をするんだと勝手に信じて電通に入ります。
しかしクリエーティブ試験に落ちて、入社の際のアンケートでもっとも行きたくない部署としてマーケティング局と書いたら、そこに配属されてしまいました。
とてもショックでした。
ところが、部署に配属されるとそこの担当がNTTグループでした。
必然的にNTTDATAの担当をすることになりました。入社2年目になってすぐに、NTTDATAの営業担当に僕が考えた色んな企画を勝手に作って持って行きました。そしたら、ちょうどTVの特番の企画を求めていて、龍村さんと話し合って「ボイジャー」の話を提案し、気づいたら企画が通っていました。
龍村さんがNASAの広報官、ユーリ・ヴァンダーウッドと出会いがあったことが大きかった。ユーリはもともとオランダ人ですが、オランダの植民地だったインドネシアで育ったことと宇宙の話が、ひとりの人生を通じてつながっているということに感動して、外宇宙に向かうボイジャーと、内なる宇宙観に満ちたバリ島のイメージをつないだ番組を構成できるのではないかという企画でした。僕自身は77年から89年までボイジャーが惑星を通過するたびに新聞や雑誌の切り抜きを作り持っていたくらいボイジャーに関して詳しかったこともあり、夜遅くまでリサーチをしたことを覚えています。
決まったのは初夏、急遽番組のプロデューサーと僕がNASAに行ってユーリ・ヴァンダーウッドと出演交渉をしてOKが出ました。
番組制作は制作会社に任せるもので、よほどの理由がないと企画担当者は海外には出張できなかったが、自分が想いを込めた企画である以上、どうしてもすべての撮影に同行したかったので、理由を作って行きました。しかし、何度も行ったら最後はだめだと言われたので、そこは自腹で行き、ほぼすべての撮影に立ち会いました。
はじめ放送予定は3月後半でしたが、その日が編成上NGになり、申し訳ないけど2月にしてくれとテレビ局から言われました。一ヶ月製作期間が短くなるというのは受け入れ難いのもので、皆が不可能だと思いました。12月末まで撮影していたので、編集は1月からしかできなかったのです。しかし、調べてみると放送日に決まった2月15日という日に特別な意味があることがわかったのです。その日は、太陽系のファミリー・ポートレイトが撮影されたちょうど二年後の記念日だったのです。それで、がんばって間に合わせようという気持ちが生まれました。僕自身も昼間の業務が終わったあとに、明け方まで続く編集作業に毎日のように参加しました。

振り返ることから共鳴が生まれます。
過去を振り返るから未来を見つめる視線が生まれるし、遠くから自分を振り返ることで、より大きな世界に気づくこともあるでしょう。
振り返ることで人間は謙虚になれるのではないでしょうか。
ボイジャーは二回振り返ります。
一度は地球に向かって振り返り、ふるさとの写真を撮る。そしてもう一度振り返って宇宙の彼方へと飛んで行く。その態度がとても素敵だと思う。このことが僕の胸にくさびのように残っています。

企画:馬来哲彦
文構成:宝生明

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