RESONANCE cafe

レゾナンスCafeVol.006『演劇におけるゾーン体験「光の相互放射」とは?』開催報告

レゾナンスCafeVol.006『演劇におけるゾーン体験「光の相互放射」とは?』開催報告

レゾナンスCafeVol.006『演劇におけるゾーン体験「光の相互放射」とは?』開催報告

Prayers Studioをお招きして、レゾナンスCafeの第六回をおこなった。

Prayers Studioはスタニスラフスキー・システムを取り入れて演劇をする集団。その芝居は俳優の演技が突出している。まだ小さな劇団だが、その可能性は計り知れない。20名ほどの客をさまざまな感情の渦に巻き込んだ。演目はシェラ・デラニー作『蜜の味〜結婚式』。

女がひとり身支度をしている。髪を結い、時間を気にする。「ジョー、もう時間だよ」と奥に声をかけると、別の女がひとり出てくる。そのときの第一声で、この二人が親しい間柄で、しかも深い葛藤にあることがわかる。

芝居が進んでいくと次第に葛藤が露呈し、両者の悲しみとわずかな希望が理解できる。

16071507

一番驚いたのはジョー役の小池恵理子の声。母親に対する怨嗟の声が、その響きだけでこちらの感情を巻き込む。長い芝居の一部だけを見たので、前後関係は曖昧だが、その声でただならぬ状態であることがわかる。一方でヘレン役の妻鹿ありかは、子供を自立させたいという思いと、自分勝手な行動の不安定な感情を抑えた演技で見せる。

物語自体は最後まで見るとよくありそうな話で、文字だけで読んだら、そんな話で感動するのだろうか?と思うようなものだが、そこに二人の女優の演技が加わると、観客の感情を揺さぶる。

芝居を見たあとで参加者に何を思ったか聞いた。「ヘレンが髪を結うシーンを見て、すぐに母親を思い出した」とか、「自分の親との関係を考え直した」とか「もっと母親に自分の感情をぶつければよかった」などという感想があがってきた。

Prayers Studioを主宰する渡部朋彦の話は、人間の存在について語る。わずかな芝居のコツを見せることで、普段気がつかないささやかな動作が、いろんなことを表現していることに参加者は気づかされた。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

深い人間の理解はいうまでもなく大切だ。特に現在、人間の文化全体が何かの変容を迎えようとするとき。

スタニスラフスキーはロシア革命のときにロシアにいた俳優だ。ドストエフスキーやトルストイが深い人間存在に対する考察をロシアの人たちに促し、知識人はそれらを読むことが常識とされていたあの時代。愛と暴力が混在する不思議な事態へと巻き込まれていった。その危うさを僕たちはいま日本に感じている。

愛情が深ければ深いほど、それが暴力に反転する可能性も高まる。それがどうやら人間というもののようだ。その愛情が深くあることをきちんと見極め、暴力ではない表現を確立していくべき時代になりつつあるように感じている。そういう人間存在を見つめるのに、いかに演劇が寄与しているのか、今回のイベントで僕は学んだ。

Prayers Studioでは、ドラマトライヤルというイベントをおこなっている。俳優による濃密な演技を見たあとで、参加者がその演技を実際にしてみる。見ると演るとでは大違いであることが、実際に演ることでわかる。自分という存在が、何を隠して、何を表現しようとしているのか、普段は無意識の底に沈めているなにものかが、演じることによって浮上する。浮かんだものをほとんどの人は自分では気づかない。他人の演技を見ることで、はじめてそのようなものがありそうなことを、傍観者は感じる。このような学びを通して、これからの時代に大切な愛の表現にたどり着くといいのだが。多くの人が一度は体験してもらいたい。

Prayers Studioのサイト

 

One thought on “レゾナンスCafeVol.006『演劇におけるゾーン体験「光の相互放射」とは?』開催報告

  1. houshouakira Post author

    講話していただいた渡部朋彦さんから以下のようなご感想をfacebookにいただきました。
    ありがとうございます。

    今月13日、レゾナンスカフェさん(http://www.houshouakira.com/resonance/?p=239)の第6回企画としての「演劇におけるゾーン体験 光の相互放射とは?」盛会のうちに終了致しました。一安心して終了後暫く フヌケになっていました(^◇^;) ようやく日常に復帰したので振り返りご報告をと思います。

    レゾナンスカフェさんは、毎回色んな分野や視点から、レゾナンス(=共鳴、共振)について、学んだり楽しんだりしていく会。

    今回は我々Prayers Studioがお声掛け頂きましたので、演劇を通しての共振共鳴の秘密について、皆さんと共に感じ、考える場を作ってみようとチャレンジさせて頂きました。

    僕はもちろん、演劇で深く大きな共鳴を起こしたくてずっと追求してきたので、自分なりに考えてる事や発見した事などあるにはありますが、それを話して「いい話してやるから、お前らメモしとけ!」みたいな一方的な感じじゃつまんないと思っていて、なぜならそれは、僕自身がまだまだ共鳴共振について知りたいこと気づきたいことがあるからでして、人との対話を通して、知らなかったことを学ばせていただく機会になるのはもちろんだし、新たな気づきが生まれることも本当に多いと思っているからです。

    さて、そんな期待をしていたら、開始早々、ドカンと来ました。レゾナンスカフェ主催者の宝生さんの、開始の挨拶がいきなり素晴らしかった。スタニスラフスキー、ベルナツキー、テイヤールドシャルダン、ヌースフィア、トルストイ、ドストエフスキー、などなど引き合いに出しつつ、演劇と共鳴がいかなる関係を持つか、これからの人類の発達に対して、いかに重要な役割を担うか。というような、直球ど真ん中のお話。もう、僕自身が楽しくて楽しくて仕方なくなっちゃいました。

    上演の前に少しエクササイズでもして、観劇に向けて心のウォーミングアップ、なんて考えていたのも、もう、無しw 僕も少しだけお話しさせてもらって、上演に入りました。考えてたこと準備してたことなんて、いつも変更するためにあるようなもんですねw で、観劇後のシェア。で、出るわ出るわ、皆さんいろんな共鳴の仕方をされ、過去の体験を思い出す方も、また、個人的な過去の体験以上の、もっと人類共通の集合無意識的な部分に触れる体験についてお話くださる方も。地球サイズ、宇宙サイズのお話も、星のすれ違う音を聞いたので音楽にしたなんて凄いお話も。

    結果、皆さんとのシェアタイムが盛り上がりに盛り上がって、予定のタイムテーブルは完全に無いものになりましたw

    もちろん僕にとってはこの上ない幸せな時間となりましたが、ご来場いただいたお客様にもかなり楽しんでいただけたようで、かなり濃い時間となりました。

    いや〜良かった良かった! レソナンスカフェの宝生さん、クララさん、福島さん、ご参加いただいた皆様、PrayersStudioの皆、この度は本当にありがとうございました。

    またいつかこんな場をご一緒できればと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です