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レゾナンスCafe Vol.008 『前世と来世のあいだ ガムランの響き』開催報告

レゾナンスCafe Vol.008 『前世と来世のあいだ ガムランの響き』開催報告

レゾナンスCafe Vol.008 『前世と来世のあいだ ガムランの響き』開催報告

レゾナンスCafe
2016年10月26日、レゾナンスCafe Vol.008 『前世と来世のあいだ ガムランの響き』をBVハウスで開催いたしました。

アナック・アグン・グデ・ラーマ・ダレムさん(これ以降ラーマさんと略します)とその御后様に来ていただき、お話をしていただきました。ラーマさんは1980年代に日本で建築事務所に勤務していた経験と、御后様が日本人であることから、日本語は自由に話せるのですが、バリ文化の深い話や、霊的な話になると抽象度が高くなるため、聞いている人がいろいろと自分の内側で解釈のための会話を始めます。それがとてもインパクトがありました。

ラーマさんはウブド随一と言われるガムラン楽団グヌンサリのリーダーを務めたアナック・アグン・グデ・ングラ・マンダラ(以下マンダラ翁と呼びます)の孫にあたります。1931年にマンダラ翁はグヌンサリを率いて、はるばるフランスのパリ植民地博覧会に行き、はじめてバリ島以外でガムランを演奏し、ヨーロッパにバリ島ブームを引き起こしました。バリにとって歴史的な偉人と言える方です。マンダラ翁は1986年に亡くなるのですが、その直前にマンダラ翁とその一族プリカレラン王家の人々のインタビューを集めた本『踊る島バリ』(取材編集 東海晴美・大竹昭子・泊真二 写真 内藤忠行ほか パルコ出版刊)が日本で出版されました。ラーマさんの写真やインタビューも掲載されています。現在プリカレランはティルタサリとグヌン・ジャティという楽団をマネージしています。日本の文化人や音楽家なども多数訪れている名家です。

このような芸能一家に育ったため、ラーマさんはさまざまな知識をマンダラ翁からあたえられます。しかし一方で不幸だったのは、幼い頃、ラーマさんはからだが悪く、思うように動けない状態だったため、楽団に入り、実際に演奏したり踊ったりはしませんでした。しかし、健康を取り戻すため、バリ島の伝統的な医術と宗教を身につけていくことになります。

ラーマさんのお話は、何かを明確に理解するための話というよりは、自分の内側に眠っている普段はあまり光をあてない解釈を引きずり出し、それにいつもとは違う角度からの光をあてるような体験になります。だからその人その人によって異なった体験となります。

たとえば、ガムランの音は少し音程の異なる楽器を一度に二つならします。するとそのあいだには干渉によってできるモアレのようなうなりが生じます。それは西洋音楽では不協和音と言われ、「悪いもの」という解釈がなされますが、バリではそれこそが美しい音だと解釈されているのです。普段不協和音を忌み嫌う人間にとってその解釈はまず「信じられない」という反発から始まり、次第に慣れ、最後に「美しい」と感じるようになっていく。この移行体験も人によって異なるでしょう。そしてその移行体験がその人に音への新たな解釈の可能性を授けてくれる。ラーマさんがしてくれるお話は、普段の常識的解釈からはあまり聞かれない話のため、それに深く取り込まれる人は眠くなり、それを受け入れる人にとっては興奮となり、受け入れる人によっても受け入れ方が違うので、それぞれに感想を聞くと別の話になったりします。そういう会話のプリズムを生んでいくのがラーマさんのお話の面白いところです。

ラーマさんのお話は、その話を触媒として自分の内側に何が生まれたのかが大切なのだと思います。なぜなら、ラーマさんは、そのような探求を通して、幼い頃の病いを乗り越え、健康を取り戻しっていったからです。

参加して下さったみなさんは集まっていただき、ありがとうございました。とても素敵な場になりました。もしあのとき体験した不思議な感覚を深めたいのであれば、ぜひバリに行ってみて下さい。そして可能であれば、ぜひニュピに参加してみて下さい。

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